ヤン・ケビが初めてラスベガスを体験したのは2012年──サンフランシスコからニューヨークまで「絵を描く旅」をした時に遡ります。そして2022年4月に、この街で自らの力を試すべく、1週間にわたって再訪。「到着してすぐに、自分がここに戻ってきた理由が分かった」と語るヤンは、明確な目的もなくストリップ通りを流れ行く人々の群れに、一瞬にして引き込まれました。ラスベガスは、永遠に続く動きの中で両極端がぶつかるように、「役者が真ん中にいて、観客がその周りをウロウロしている円形劇場のようなものだ」とアーティストは語ります。ケビがパリのスタジオに戻ってから、鉛筆が紙を擦り、溝を作り、彫刻していくという制作作業がはじまりました。沢山の観客たち、カラフルなアラベスク模様、泣き出しそうな表情──「描くことはいつだって僕のテーマで、ここラスベガスが額縁の役目を果たしてくれた。僕の目的は、このテーマに取組むのに最適なビジュアルとグラフィックのソリューションを見つけることだった」とヤンは語ります。
1987年に生まれたヤン・ケビは、幼少期をパリで過ごしました。フランス国立高等装飾美術学校を卒業後、絵を描くことは彼にとって習慣となり、常に観察したものの本質を自然に、そして迅速にスケッチして捉えるようになりました。ケビのアプローチの基本は、このたゆまぬ実践とスピード感溢れる筆致からきており、乾いた画材に、主に鉛筆を用いて生み出す、生き生きとしたストローク、切り詰めたライン、透明感、空間や平面のレイヤーなどを特徴としています。
- テキスト:Virginie Luc
- サイズ:28 x 19 cm
- 160ページ
- 70の描画
- ハードカバー