2021秋冬メンズ・ファッションショー

2021秋冬メンズ・ファッションショー

社会に古くから根付く規範によって、集団的精神として私たちの心に植え付けられた無意識の偏見を掘り下げた本コレクションは、1953年に発表されたジェイムズ・ボールドウィンの代表的エッセイ「村のよそ者(Stranger in the Village)」がテーマ。スイスの村を訪れたアフリカ系アメリカ人としての経験を通して語られるボールドウィンのエッセイは、文化的なアウトサイダー対インサイダーという社会の構造が確立されていることを反映し、現代におけるアブローの身近な体験を探求するための中心となる思想となっています。

ルック

典型的なイメージを持つ多彩なパーソナリティ──作家、芸術家、放浪者、セールスマン、ホテルマン、ギャラリーのオーナー、建築家、学生など──それぞれを定義する存在となっているユニフォームを掘り下げた本コレクションは、先入観を変えるためのツールとしてファッションを採用。ヴァージル・アブローは、これらのコードの文法に異なる価値観が吹き込みました。

詳細

服やアクセサリーを通して、イリュージョンをテーマに様々なモチーフやテクニックを披露──馴染みのあるディテールをトロンプ・ルイユやフィルトラージュが提供する欺瞞的なレンズを通して複製することで、ありふれたノーマルなものを究極の高みにいたらせ、再流用しています。今回、ヴァージル・アブローが招いたコンセプチュアルアーティストのローレンス・ウェイナーは、これらの前提と結び付いた一連のパターン化した格言を構築しています:「人はうわべだけで判断できる(You can tell a book by its cover)」、「同じ場所、同じ時間(The same place at the same time)」、「(どこかで、なんとかして)(Somewhere some-how)」。

舞台演出

ボールドウィンのエッセイで探求された心理的葛藤と身体的な対立を具現化した舞台セットは、スイスの村を大理石で抽象的に構成、再構成し著者の移り変わる感情を体現。各方面を代表するアーティストが一堂に会し、芸術強盗の比喩的概念を通して表現されたのは、確立された芸術界から生まれたものとは異なる文化遺産の基盤が再流用される様子でした。そして、舞台セットに使用された木材や石材の大部分は、ルイ・ヴィトンのサステナビリティへの取組みとして再利用のために、「アート & カルチャー」部門のパートナーより寄贈されました。