
ファッションイラストレーションで知られるビーマン──彼女の作品は、すっきりした黒いライン、カラーフィールド、平面的な技法、極端なまでに単純化された形状にほんの少しだけ精巧なディテールを添えた自由なスタイルが特徴です。彼女のキャンバスは、子供時代の想い出からインスパイアされた日常生活のシーンで溢れていますが、同時に古典的な彫刻や日本の浮世絵、新即物主義(1920年代後半にドイツで興った芸術活動)からウィーン工房にいたるまで、幅広い審美的な思考もビーマンのインスピレーションとなっています。
ロシアをテーマにしたルイ・ヴィトンの「トラベルブック」の依頼を受け、ビーマンは躍動感溢れるサンクト・ペテルブルグを繊細なタッチで写し取りました。
CLOSER LOOK
秋に3週間かけて、ビーマンはシアターをはじめ、ダンススクールやキャンディーカラーの宮殿、ゴールドのオニオン型ドームの教会まで、延々と訪ね歩きました。冬宮殿からペトロパヴロフスク要塞へとネヴァ川の跳ね橋を渡り、正門の扉を押し開き、静寂に包まれる隠れた中庭へと歩を進めました。
彼女はブルックリンにあるスタジオに戻ると、記憶のノートを辿りながら想い出を描き出しました。「サンクト・ペテルブルクは元気で活気に満ちたエレガントな街です」とケリー・ビーマンは語っています。
ルイ・ヴィトン「トラベルブック」について
世界中から著名なアーティストや新進気鋭のアーティストを迎え、各々が訪れたことのない国を旅して描くルイ・ヴィトンの「トラベルブック」──遥か彼方の未開の地や眠ることのない都市の旅を現代的で新たな視点で捉えています。知らない場所に立った彼らの視線は未知のものに対する驚きによって研ぎ澄まされ、あるいは再発見の喜びによって刺激されます。