クリストファー・ネメスの世界

優美なエスプリを感じさせるルイ・ヴィトン 2015秋冬メンズ・コレクションには、クリストファー・ネメスの詩的な世界が広がっています。彼は画家、イラストレーター、そしてファッションデザイナーとして活躍し、2010年に51歳で他界。針と糸は、彼にとって絵の具と絵筆のようなものでした。今でもブリティッシュ・ファッションのアイコンであり、変化し続けるロンドンの反逆的なエネルギーを象徴しています。10代の頃からネメスのファンであり、幸運にも彼と直接会う機会があったキム・ジョーンズは、いつか一緒に仕事をしたいと願っていました。ネメス自身はこの世を去りましたが、彼のシグネチャーだったロープ・モチーフを再解釈し、クルーネックセーターやダッフルコートにあしらうことで、キム・ジョーンズは強烈なオマージュを捧げ、ネメスのエスプリを蘇らせたのです。
1980年代当時、不景気に見舞われた「未来のない」イギリスで、クリストファー・ネメスは自身のために洋服をデザインしはじめました。テーラードスーツを分解して再構築し、そのプロセスの跡を残しながら、針と糸で剥き出しのアートを創造したのです。キム・ジョーンズはこのように述べています。「ファッションは社会を映し出します。困難な時代には新たなチャレンジに挑み、限界を押し上げる必要があります。ネメスは、それを実行したのです」。これは、最先端テクノロジーにカッティングの技を融合させるなど、キム・ジョーンズが実行していることでもあります。そうして生まれたのがシンプルでエレガントなシルエットであり、ネメスが好んだロープのねじれたライン、ボタンや安全ピンなどの感性豊かなディテールが詩的な趣を加えています。
