ART AND SOLE

Photographer: PATRICK SWIRC
フィエッソ・ダルティコでは、アートと職人技が、左足と右足の関係のようにごく自然に呼応します。イタリアのレディース・シューズ産業の中心地であるリヴィエラ・デル・ブレンタ。そこの近くにある、建築家ジャン- マルク・サンドロリーニが設計したアトリエは回廊を想わせます。100ヤードにおよぶファサードは、二重構造のメタルメッシュで覆われ、コンクリートの壁は日本の著名な建築家 安藤忠雄氏の作品を想起させる官能的な滑らかさがあり、パティオは禅庭のような静穏な雰囲気に包まれています。サンドロリーニの急進的な立体派デザインは、運河の両岸に優美なパラディオ式建築の邸宅が建ち並ぶ地元の伝統を打ち破っています。それでも、フィエッソ・ダルティコのアトリエには、絶対的な美しさがあります。傲慢さのかけらはなく、本質的なものを反映する建築の重要性を雄弁に物語ります。その本質とは、ルイ・ヴィトンの靴製造の真髄です。
フィエッソ・ダルティコのアトリエには、43のレディース・シューズ ラインがあり、メンズも同じくらいあります。レデイース・メンズ合わせて年に約1,000種類の靴を製造します。デザイン部門では、鉛筆、コンパス、ハサミなどの基本道具の隣に、最先端のコンピューターが設置されています。デザイン部門の近くには素材倉庫があり、そこでは目が眩みそうなほどの多様な色彩のレザーやファブリックが並び、魅力的な色の組み合わせを試すことができます。

製造ユニットには4つのアトリエがあり、ピエト・モンドリアンの色彩のようなレッド、ブルー、グリーン、イエローに分けられ、自然光が溢れる長い廊下でつながっています。各工房の名前は、ルイ・ヴィトンのアイコニックなバッグの「アルマ」と「スピーディ」、象徴的なレザーである「ノマド」と「タイガ」にちなんで名付けられています。靴作りには多数の工程があり、すべてが規則正しく行われています。素早く確かな手さばきで、革を薄くしてカッティングを行い、磨いて修整を加え、接合したり折り合わせたりして縫製を行い、きれいに整えてから包装するまでの間、職人の厳しい目はどんな些細な欠陥も見逃すことはありません。アーティストと同様に評される職人の匠の技。ソールのハンドステッチ、レザーのしわ取り、さらにはスニーカーの紐通しにいたるまで──そのすべての動作には演出されたような緻密さがあります。矛盾しているようですが、「足」にすべてを捧げる空間で実にしなやかに動くのは「手」なのです。
16年前、当時はまだシューズを製造していなかったルイ・ヴィトン。現在、フィエッソ・ダルティコのアトリエには、アート、職人技、ラグジュアリーを組み合わせた輝かしい空間が確立されています。

